サガン鳥栖 分析ブログ

サガン鳥栖について考察していきます

サガン鳥栖対コンサドーレ札幌

トーレスの引退発表というショックなニュースがあって迎えた札幌との試合でした。結果としては3連敗となってしまいました。前半何もさせてもらえませんでしたが、後半の修正力で同点に追いつくかという展開まで持って行けました。今回は主になぜ後半修正できたのか、そして最後にトーレスについて述べたいと思います。

 

・両チームのスタメン

f:id:koki135:20190623190156j:plain

札幌は3−4−2−1でボール保持時は3−2−5や2−3−5で攻撃的であり、また、前からその並びのまま前から奪いにくるのである意味守備的でもあります。世間で言われるところのミシャ式。正確なクロスを左から上げられるので福森がキーマンになるかと思いましたが、今節は欠場でした。

 

鳥栖は今まで通り4−4−2ですが、前節好調だったヨンウが今節もスタメンに。あと驚いたのが松岡のCHでの起用でした。今までは右SHでの起用でしたが、札幌の攻撃力を考えて福田と並べることで守備的に行きつつもヨンウのところでカウンターで点を取りたいそんな監督の思惑が見える布陣でした。

ただ松岡が前半の10分の早い時間帯で負傷により交代を余儀なくされました。その前のルーカスとの競り合いの後でずっと腰を気にしていたのでその際に怪我をしたと思われます。軽症であることを祈るのみです。

松岡交代して小野が入ったあとは以下のような布陣に

f:id:koki135:20190623192605j:plain

 

 

チャナティップに翻弄される鳥栖

3−4−2−1と4−4−2では図のようにズレが生じてしまいます。

f:id:koki135:20190623192717j:plain

札幌の両WBが上がると小林、三丸がIHとWBを見ないと行けない構図になります。

鳥栖はこうした布陣の相手と戦う場合はコンパクトな4−4−2を敷いて相手のハーフスペースを消しつつWBに入ればスライドして奪い切る守備組織でした。

しかしそれは中盤の4人のライン間が紐で繋がれているような状態を保っていないとダメで少しでも乱れるとハーフスペースやサイドへ展開され相手に起点を作られてしまいます。

今まで右サイドはSH松岡CH福田の守備的な2人で相手の思い通りにさせませんでした。

今節使われているSHヨンウは松岡と比べるとそこまで守備の統一は図れません。

しかし、ヨンウが悪いというわけではなく、彼にカウンターのタスクを与えているために福田と同じラインに立てない理由があるわけで松岡との起用の差は守備をとるか攻撃をとるかになります。

当初のプランだと福田と松岡2人をCHにおくことでヨンウが戻ってこれなくてもカバーしようとしていたかもしれませんが、不測の事態でそのプランは崩れてしまいました。

また、鳥栖はある程度の前進は許しますが、札幌に最終ラインと荒野で回されて組み立てられるのを嫌がってセンターサークル付近までくるとドンゴンと金崎に加えて福田が前へプレスにいくようにしていました。

福田が前へ行くと当然そこにスペースが生まれ、そこをチャナティップが降りてきてパスを受ける場面を作られていました。

 

1点目の失点のコーナーキックのきっかけとなったのは、やはりチャナティップが受ける形からでした。

相手の最終ライン左からの持ち上がりに対して福田が寄せていき、空いたところにチャナティップが受け、鳥栖のSBとCB間に通されかけた危ない場面でした。

チャナティップは降りて受けるとSBとCBの間にパスを通すようにしていて恐らくチームとしての共通認識だったと思います。

そのような場面が前半26分や後半64分などに見られました。

 

2点目のコーナーキックのきっかけもチャナティップが間に受ける動きからであり、鳥栖の陣形が整う前に間で受け、小林が外側のWBとチャナティップの2人の対応に追われていました。

 

さらに札幌はビルトアップに困ればジェイに当てるという場面も見られ、攻撃のパターンには困っていませんでした。

 

・左サイドからの組み立てに苦しむ鳥栖

組み立ては主に左サイドで行っていましたが、札幌の3−2−5で押し寄せる波に揉まれてしまい全く前進できませんでした。

f:id:koki135:20190623203252j:plain

 鳥栖は豊田がいるとプレスに困った時の豊田頼みで一気に前に畳み掛けることができましたが、前節に引き続き今節もいません。前節の浦和よりも前からプレスにくる札幌に自信を失ったかのように全く効果的でない短いパスが続き、前半の31分にロングパスで小野からの折り返しのドンゴンの惜しいシュートこそはありましたが、それくらいでボールをロストしてしまう場面が目立ちました。

前半20分では秀人の横パスをチャナティップインターセプトされロングシュートを決められそうになりました。

逆サイドの小林がフリーだったので飛ばしてパスを出せたらよかったのですが、怖がって安全なところ(実は安全ではない)に出してしまいピンチを迎えました。

鳥栖は全体的にもらう位置が低すぎて、それが意図して低い位置で受けているように感じませんでした。誰かが低い位置で受けたならば代わりに高い位置を取ってそこでパスを受けなければ、ボールを戻すだけでコースも敵に読まれてしまいます。

相手が前からくる時の対処法として前半28分に良いシーンがありましたのでそこを紹介します。

f:id:koki135:20190623204901j:plain

小野が降りて受けたところに進藤がついてきたので一度、三丸にボールを預けます。そして小野はルーカスが空けたところに走り込みボールを三丸から受け、さらに進藤が空けたところを原川が使いました。この攻撃の流れは相手が前からきた際に空けたスペースをどう使うかが詰まっていると思います。欲を言えばもう一度三丸が絡んできてPA内に侵入してきても面白かったのですが、小野が原川からリターンでもらいクロスをあげて、中とは合いませんでした。

このように左サイドで高い位置を狙い、連動した攻撃をもっと見せて欲しかったです。

 

・ヨンウを活かしきれず

前節の浦和はカウンターからヨンウが何回かチャンスを作りましたが、札幌は奪われてもその場で即時奪回を目指すスタイルのためそれにはまった鳥栖はヨンウまで届けることができずすぐに奪い返されました。

札幌に押し込まれていたのとジェイがいたためラインが全体的に低く、低いところで繋いでいるうちに相手にパスコースを遮断されてしまいました。

また、鳥栖アタッキングサードに持ち込まれてもすでに武蔵、チャナティップまで戻っていて攻撃が詰まってしまう場面も見られました。

 

・後半の修正点

前半ズタボロにやられた鳥栖はどう後半に修正するか注目していましたが、思い切った策を明輝監督は取ったと思います。

非ボール保持時の配置は4−4−2で変更はなかったのですが、ボール保持時に大きな変化が見られました。

f:id:koki135:20190624184251j:plain

図のような配置を取る場面が多く見られました。

小林が内側に絞る偽SBと言われるやつです。

※偽SBとは、SBが内側に絞ることで最終ラインからの出し所が増え、またサイドに出すと1対1に持っていきやすく質的優位で勝負しやすくする作戦のこと

主に小野が最終ラインに落ちて小林、福田に出せる状況を作り、場合によっては高い位置を取るサイドに展開できるようになりました。

この配置によって札幌は出し所の制限が取りにくくなり、前線3人に加えて中盤の2人は連動したプレスができなくなりました。

その結果次のような場面も生まれるようになりました。

f:id:koki135:20190624185424j:plain

後半58分や75分に図のような展開が見られました。秀人が持っている間に福田と小野が流動的に動いて縦パスを前線に当てられるようにコースを空けていました。

金崎が受けたときには収めて前を向いた福田にパスを出し(レイオフの動き)ルーカスの裏を三丸が狙う動きが見られました。

イバルボが受けた場合は持ち前のフィジカルで自分で前へいく場面も見られました。

 

また、ヨンウが縦に抜けない体勢でボールを受け、白井と1対1を迎えた場面が2、3回ありましたが、彼は下げることなく、内側の空いたスペースを狙って侵入していき好機を演出しました。この内側のスペースを作る役割には原川も絡んでおり、縦に抜ける動きで深井を引っ張り、ヨンウのために空間を作ってあげていました。

鳥栖の1点目はヨンウの1対1からの場面で原川が絡んでの得点でしたし、前半消されていたヨンウを後半は活かせることができました。

 

・偽SBの守備の時の利点

小林は内側に絞りヨンウのサポートは原川に任せることにして、後ろ側でカウンターのリスクに備えていました。

f:id:koki135:20190624193538j:plain

札幌がボールを奪うとチャナティップに預けようとしましたが、内に絞っている小林が立ちはだかり、何度か相手のカウンターを潰していました。

小林のポジショニングの良さが、急なシステム変更にも対応できたと思いますし、数々の経験をしたベテランだからこそできる技でした。

カウンターを潰すことで鳥栖の時間を多く作りましたが、3失点目は鳥栖の選手のパスミスで小林もわずかに対応できず、出足の早かったチャナティップから武蔵に通されどうしようもないシュートが決まりました。

 

・まとめ

前半早々に松岡の負傷で交代カードを1枚切り、思い切った交代ができない中で、配置の変更で後半は自分たちのやりたい時間にできていました。明輝監督とS級の同期の戸田さんといいこのあたりの方々は現代サッカーをしっかり学ばれているので、できたプラン変更だったかと思います。1つの形に捉われない明輝監督はさすがだと思いましたし、後半のプランが成熟していけば鳥栖はもっと面白いチームになるはずです。

 

・最後にトーレスの引退について

この戦術ブログを書こうと思ったきっかけがトーレスの加入でした。私は昔からあの抜け出す動きのトーレスが好きで今シーズンは彼が活躍する年になると思い、それなら真剣にサッカーを見ようと決意しました。実際、トーレスは今シーズン思った活躍ができず、私自身、負けた試合を見返すのが辛い時期がありました。

そんな時に思い出すのが、昨シーズンの横浜戦のゴールであり、初めてサッカーをみて泣きそうになった場面でしたし、どんな逆境でも跳ね返す力を間近で見せてもらいました。あの試合を思い出すことで、どんなに負け続けてもこのブログを続けることができましたし、その結果自分のサッカー知識が深まり、本当にサッカーが好きだと自信を持って言えるようになりました。

トーレス鳥栖に来てくれたそれだけでも感謝しかありませんし、今後はアドバイザーとして鳥栖に残るという夢のようなことを言ってくれたときは震えました。

まだ試合に出るかと思いますので、最後のときまで彼の勇士を目に焼き付けたいと思います。