サガン鳥栖対セレッソ大阪
今節は金崎が報われると信じていましたが、叶いませんでした。あと少しのところでしたが、、、個人的にはロティーナ監督でどうセレッソが変わったのか気になっていました。きちんと見るのは初めてでしたがさすがだなという印象しかなかったです。かつてのセレッソは個人のフィーリングでやるイメージでしたが、今ではしっかり組織で戦うチームになっていました。そんなセレッソ大阪相手にうまくいっていたように見えましたが、実際はそうでもなかったかも?と思えたところも多々あったのでそうしたところを踏まえながら書いていこうと思います。
目次
1.両チームスタメン
2.両チームの狙い
3.効いていたデサバト
4.鳥栖の左サイドでの攻撃
5.スペースを生み出すセレッソ
6.鳥栖の右サイドでの攻撃
7.セレッソの選手同士の距離感の良さ
8.試合総括
1.両チームのスタメン
鳥栖は松岡が代表の関係で欠場。代わりに安在がスタメンでした。
セレッソは前節と変わらないメンバーとなりました。
2.両チームの狙い
左サイドを起点とするのは変わらないが、セレッソのSBが上がって空いたスペースにも狙いを定める
左サイドに攻撃に強みを持つ清武、丸橋がいるのでそこを使いたい
ポゼッションで自分たちのリズムを作る
鳥栖はポジティブトランジション(守→攻への切り替え)の際、三丸が何度か松田の空けたスペースを目掛けて放り込んでいました。ただ狙いがクエンカになっており、松田との競争では松田がボールに追いついてしまって回収されてしまう場面が前半の始めに何回か見られました。こういうサイドにラフなボールでも収めてくれるのはドンゴンのような選手であり、クエンカへの縦のロングパスを通そうとするのは果たしてどうなのかなと思うところでもありました。
ただ、ボールポゼッション時に最終ラインから繋ぐ際に左サイドでうまく組み立てて相手深くの陣地まで侵入できていました。(後述します)
セレッソは清武が狭いスペースでボールを扱えるのでハーフスペースで受けたところで相手のマークを混乱させたい。もしくは丸橋に通してそこから組み立てたい思惑が見えました。しかし、安在が松岡と同じような役割を果たしており、福田とともにハーフスペースを消す仕事をしていました。また、安在は木本が丸橋に繋ごうとするとすぐさまコースを切りに行き、相手に攻撃のやり直しをさせていました。
3.効いていたデサバト
前節の鹿島戦と違ったところはビルトアップの出口となるデサバトが金崎と豊田にパスのコースを塞がれたとしても自らパスコースを作っていて鳥栖の思い通りにはさせませんでした。例をあげたいと思います。
前半5分のシーン
間で受けれないデサバトは敢えて豊田の斜め前に降りて藤田からパスを受けました。そこから藤田にボールを戻しますが、豊田がデサバトの降りる動きにつられて間が空いてしまい、そこをすかさずデサバトが使い、パスを藤田から受けました。この何もないような降りる動きからボールを返すだけの遊びのパスですが、これが非常に鳥栖のようなFWが積極的にプレスをかける相手には大事になってきます。藤田とデサバトの一方向だけなら豊田は距離を縮めやすいですが、デサバトが自ら2人分の働きをして藤田と結んで三角形を作り出し、パスコースの幅を生み出しました。
デサバトは終始この間で受けようとする動きを繰り返しており、完全には鳥栖のリズムにはさせず、自分たちの攻撃のチャンスを作り出していました。
4.鳥栖の左サイドの攻撃
鳥栖はポゼッション時に最終ラインからの組み立てで左サイドの攻撃がうまくいっていました。その要因としては水沼が三丸とクエンカの2人を見る構図になっていたからだと思います。
セレッソはCHの藤田、デサバトの2人のどちらかが前に出て福田にマークさせるということはさせませんでした。おそらくしっかりと後ろに枚数を残してロングボールを豊田目掛けて蹴られても対応できるようにしていたかったからだと思います。裕治にボールが入れば清武が前へ出て対応していました。
水沼に2人を見させる構図も松田が前に出てしまってバランスを崩してしまうのを恐れていたからかもしれません。
ただ、結果的に鳥栖はそこのズレを高丘の高いパス精度や高い位置を取る三丸への秀人の質の高いパスで何度も敵陣奥へ侵入(赤い部分)できました。
敵陣奥に侵入できたのですが、セレッソの左CHのデサバトはそこまで鳥栖の左に寄らず、松田の空けたスペースを埋める動きを見せており、鳥栖は左サイドで数的優位を作る場面は作りましたが、セレッソとしてはバランスよくブロックを組んで守っていたため攻めていたように見えて実はセレッソの思惑通りだった可能性もあります。
三丸が奥深くまで侵入してクエンカに戻してクロスをあげる場面が何度か見られましたがそこまでの決定機が作れなかったのはセレッソが準備できて対応していたからでしょう。
5.スペースを生み出すセレッソ
セレッソとしては清武がハーフスペースでボールを受けるのがベストでしたが、相変わらず鳥栖の硬いブロックの前ではボールを受けられませんでした。
そのため時折、福田の前に降りてきてボールを捌くシーンが見られてきました。
間に受けるデサバトを嫌がって原川がプレスにいき、降りてくる清武に福田が対応する場面が見られ失点の布石になってしまったように思えます。
次の図は前半16分のシーンです
ヨニッチが前へ運んで行き、豊田がプレスに行きました。そうなるとデサバトが空いてパスを受けられるようになり降りてくる清武へパス。そして逆サイドの丸橋へ展開して自らが空けたハーフスペースへ飛び込んで行きました。この場面では丸橋からのパスを清武がうまくトラップできずに事なきを得ましたが、うまくトラップされていれば中の人数は足りておらず、失点の可能性が高かったです。
逆サイドに少ないタッチ数で展開する事で鳥栖のスライドを追いつけなくして、清武自らがいたスペースをブロックを組まれているときよりも広げており、組織としての力が強いなと感じる場面でした。また、この場面で清武がボールをもらう前に逆サイドの方を指しており、ゴールまでの展開が頭の中で描けていたのではと思います。
・失点シーン
スペースをうまく作られたのが前半38分の失点シーンです
まず、クエンカが松田のマークが自分だという意識が強すぎて前へプレスに行き過ぎてしまいマークのズレを作られました。松田が降りる事で藤田は代わりに一列前にポジションをとりました。間で受けるデサバトを嫌がり原川はプレスにくることはセレッソとしてはもうわかっていた事でしょう。あとは福田をどうするかというところで藤田が前に出て、福田がそこに食いつきました。そうなると清武がフリーでいるのは藤田は理解していたと思うのであそこで柔らかいワンタッチのパスが出たと思います。パスを受けた清武はドリブルで小林と安在を引きつけつつ、丸橋に出して、グランダーのクロスをメンデスが押し込みました。
気をつけていたはずの左サイドでやられたのは悔しいですが、原川がデサバトに食いついてくること、福田が清武に対応することを認識して利用したのはさすがだなと思いました。
6. 鳥栖の右サイドでの攻撃
一方の鳥栖も左から右サイドへの展開で何度か攻める場面を作れており、セレッソに傾きかけた流れを取り戻しました。
右サイドの攻撃が活性化した要因は小林が高い位置を取り始めてからでした。
前半43分のシーンですが、小林が相手SBとCBの間に立つ事で丸橋の注意が小林に向き安在のハーフスペースで受けるエリアが広がり、パスを受けられました。
ただ、鳥栖に足りないのが右の攻撃に持って行ってアタッキングサードまで侵入したあとどうシュートまで結びつけるのかが共有できていないように見えます。
1試合に1回か2回くらいは福田や松岡が相手のSBとCBの間で受けようとして走り込みますがうまくパスが合わない場面などをみるとチームとしての狙いが統一されていません。右サイドを起点の攻撃が増えると左サイドも右から左への展開の際に活きてきますし、ここは試合を重ねていきどうなるか期待です。
7.セレッソの選手同士の距離感の良さ
後半に入るとセレッソの選手同士の距離感の良さが攻撃に厚みを生み出し、徐々にセレッソペースに持って行かれました。
後半58分のシーンです。水沼が決定機を迎え、小林がギリギリのところで対応した場面でした。この図を見てもらってもわかるように常に三角形を作る関係性にいます。セレッソはフォーメーションにこだわりはなく、選手たちがいい距離感でいればそれでいいとの考えがあると思います。そのためFWがパスの出し手になったり、清武がポジションにとらわれる事なくパスの受け手になり出し手にもなれていました。
セレッソが相手を背負ってボールを受けたとき後ろには前を向いた味方がいる構図が何回も見られ3人目がパスの出しところを作るために動き出す。こういう連携でどんどん三角形を作りだしていました。この三角形がいい距離感を生み出しており、思い通りの攻撃を作り出していました。
・鳥栖の良かった選手の距離間
後半74分のシーンです
原川がクエンカにパスを出してクエンカは三丸へ。最初にパスを出した原川は相手SBとCBの間に走り込み松田の空けたスペースを埋める意識が強いデサバトが食いついてくれたおかげでクエンカは三丸からフリーでパスを受けられ、シュートまで持って行けました。原川の動きで相手陣地深くで三角形を作れて三丸は原川にもクエンカにも出せる場面でした。もしもデサバトが食いつかなかったとしても原川にパスを出して 木本が空けたスペースに金崎が走り込んでシュートまで持って行けますし、やはり三角形を作り出す大事さがわかるかと思います。
鳥栖はこのような動きを左サイドでもっと見せればさらに強いものになるはずです。
8.試合総括
前半鳥栖は左サイドで起点を作りつつ、右サイドにも展開して自分たちの攻撃を作っていました。しかし、しっかりと後ろに枚数を残して対応されていたからか得点までには至らず、嫌な存在だったデサバト、左サイドの丸橋、清武にやられてしまいました。後半は攻勢を強めたかった鳥栖でしたが、早く追いつきたい気持ちからか前に急ぐ場面が見られ、かえってセレッソの攻撃を自由にさせてしまいました。
セレッソは技術の高い選手が多く、それでいて組織としてどこを狙うのかがはっきりしていました。清武、水沼がリズムを生み出すために相手の前に降りてどう相手を動かすか試行錯誤していましたし、それに呼応するように周りも動いていたのでロティーナ監督の考えが浸透すれば優勝も狙えるチームになるのではとも思いました。
そんな相手でも鳥栖は押し込む場面は作れており、あとは組織としてどう攻撃を組み立てるかが大事だと思っているので、見習うべきところは見習って強くなって欲しいですね。